今回は、樅の木福祉会で働く支援員をサポートする本部事務局スタッフと、長野支部の統括施設長にお集まりいただき、お話を伺いました。
インタビューメンバー
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法人事務局長
阪口
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法人統括事務長
柏木
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法人主任事務員
湯浅
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長野支部 統括施設長
就労センター武石ふれあい 施設長村田
縁の下の力持ちのような存在である事務局の皆さんですが、どのような考えで仕事をされていますか?
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湯浅
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樅の木福祉会の方針の一つに「全員支援」があります。これには支援職員だけでなく、事務員や厨房職員も含めて“全員で利用者さんの支援をしていこう”という思いが込められています。私たち事務員も、もし利用者さんに何かあったときはすぐに対応できるよう、意識しています。
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柏木
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「全員支援」の中の私たちの役割のひとつとして、理事長からは「ちょっと離れたところにいる事務員や厨房職員だからこそ気付けることがある」とも言われているので、常に「支援員ではない私たちから見て」という意識を持って利用者さんのことを考えています。
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湯浅
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柏木統括事務長はとてもよく利用者さんの服装を見ています。まれなことですが、どうしても支援員の目が届かず利用者さんがシャツを裏返しに着てしまっていることがあったときでも柏木統括事務長はそれに気付きます。遠目からだと分からないような、夏なのに少し厚め生地のズボンを利用者さんがはいていることも見つけたり。
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柏木
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湯浅事務員も利用者さんへの想いが強くて、母のような気持ちで利用者さんをみています。利用者さんのことを想って涙を流すことが多いんじゃないでしょうか。それに阪口事務局長も、樅の木福祉会の全施設の利用者さんとそれぞれに共通の話題を持っているんです。全施設合わせると利用者さんは200名を超えるんですが、その多くの利用者さんと興味のある話がごく自然にできるんです。ほんとうに凄いですよ。
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阪口
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利用者さん全員ではないですが、私は本部の事務局長になる前に各施設の事務員として働いていた経験があるので、少なくともその時にいらっしゃった利用者さんの好きなことは割と知っているのかもしれませんね。
役職や立場を超え、樅の木福祉会では“人対人”の関係性が自然と成り立っているんですね。
施設自体の特徴やこだわりについては、いかがですか?
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柏木
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私たちは「環境」を大切にしています。施設・事業所においては「支援環境」ですね。それは利用者さんの日常生活においても嗜好やご自身で意思決定できること(支援環境)が重要だと考えています。自分の部屋というのは一番リラックスできる場所だと思うので、できるだけ好きなものに囲まれて、楽しく過ごしてもらいたいです。なので、ここでは制限するのではなく、なるべく自由で快適に過ごせる環境を整えています。
マンガの「ワンピース」が大好きな利用者さんは、自分の部屋に本やポスター、フィギュアまで、一通りのグッズを揃えていらっしゃいます。部屋が「ワンピース」一色で、熱いファン魂が伝わってきます。(笑)
私も自分の好きなものに囲まれて暮らせたら幸せを感じます。その方も嬉しいでしょうね。ところで神戸本部と長野支部は、何か特別な違いはあるんですか?
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阪口
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特に大きな違いはありません。強いて言うなら、立地条件と地域性の違いくらいですかね。神戸本部も長野支部も一つの法人なので、同じ理念や想いで運営しています。
そうなんですね。普段、お互いに関わることはあるんですか?
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阪口
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管理職は定期的な会議や打ち合わせで顔を合わせていますし、職員同士も年に一度の交流研修や支援研究発表を通してコミュニケーションを図ってもらっています。
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村田
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私も、法人理念を長野支部で浸透させる立場なので、月に一回、神戸本部に来て情報共有を積極的に行っています。
環境が違うと独自の方針も出てきそうですが、その辺りはどうですか?
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村田
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昔はそういうこともありました。いまに比べて、管理職も年に1~2回程度の交流しかありませんでしたから。でも、それでは一つの法人としてまとまらないので法人事務局が意思疎通のとれる体制を整えてくれました。
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阪口
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職員交流研修も、お互いの良いところを習得したり、難しいケースの意見交換を行うことを目的にしているので、会場は年度ごとに神戸と長野とで交代に行っています。また新人からベテラン職員まで幅広いメンバー構成にし、20名ほどの大所帯で訪問しています。
研修での職員さんの反応はどうですか?
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村田
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実際には神戸本部や長野支部で大きな違いやズレはないですね。法人理念の浸透は以前から取り組んでいましたが、やはり一人ひとりの直接の交流が意識を合わせる一番の近道で、長野支部の職員もみんな神戸本部から帰ってくると、仲間意識を強くして帰ってくるんですよ。
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湯浅
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法人の行動規範も、神戸本部と長野支部の職員が合同で考えて作成しましたもんね。
神戸本部も長野支部もみなさん“同じ法人”という意識で理念を実践されているんですね。その中で、長野支部には何か課題はありますか?
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村田
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長野支部の入所施設は、標高1,300mの高所にあり、通所の各事業所から30分ほど離れた場所にあります。そのため、地域のニーズにより一層応えるとなると、施設間でのスムースな連携が重要になります。なので各事業所の自律性の高さは保ち尊重し合いながら、よりよい連携方法や組織づくりなど、神戸本部と長野支部で情報交換する中で学んでいきたいですね。
神戸本部は、何か感じられている課題はありますか?
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阪口
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全員がより豊かな利用者支援となるよう同じ方向を向いて進んでいくという目標については、交流研修や会議を始め、もっともっと良くなると捉えています。また一方で、社会福祉法人としての本部最大の使命は“この施設を途絶えることなく経営していくこと”にあります。そのためには支援だけでなく、利用者さんを支える職員の育成にも力を入れなければいけない。そのためにはこれから、さらにしっかりとした土台作りをしていかなければいけないと感じています。
これから樅の木福祉会はもっともっと質の高い組織になるということですね。
それでは話は少し変わって、ここからは樅の木福祉会の掲げる「愛」について触れていきたいのですが、みなさんはどのように解釈されていますか?
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村田
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個人的な意見ですけど、「愛」ってすごく難しくて、それこそ誤解も生じやすい言葉だと感じています。私たちの仕事において「愛」は同情や哀れみにすり替わり、“施し”になってしまう危険性もある。だから「愛」を浸透させていくのは、簡単なことではないと思います。
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柏木
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私は「愛」は良いことばかりに使う言葉ではないと思います。もちろん利用者さんだけでなく、利用者さんを支援する職員に対しても言える言葉ですよね。優しい言葉以外に、言いにくいことを伝えるのも、きっとここで言う「愛」なのではないかと思います。
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阪口
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ここで言われる「愛」とはちょっと違うかもしれないのですが…よく理事長は、利用者さんと接するときに「支援が困難で行き詰まったときは、初恋の相手と思って接してみたらどうですか?」と話されることがあるんです。“相手を振り向かせるためにはどうしたらよいか、初恋のときは一生懸命考えたでしょ?”と。私はそれくらい、“真剣に四六時中考え続けなければいけない”という意味なのかと感じました。
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湯浅
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私は一度、その「愛」を感じる場面に立ち会わせていただいたことがありました。それは昨年、末期癌による入院のため、ここを退所されたある利用者さんの話です。その方は退所後、一か月でお亡くなりになりましたが、その方を支援していた多くの職員は、退所されてからもずっと、仕事でもないのにお見舞いに通っていたんです。聞くところによると、段々と食事をとることができなくなり、点滴で過ごされていたそうです。それが、私もお見舞いに同行させてもらったときのことです。それまでほとんど何も口にされていなかったのに、職員が手土産にと持参したプリンを、丸ごと一個、召し上がられたんです。病院の看護師さんもとても驚かれていましたが、その姿を見たとき、そこには“理屈ではない「愛」があったんだな…”と感じました。
利用者さんにとって、樅の木福祉会のみなさんは生きていく上で必要な、かけがえのない家族も同然なんでしょうね。素敵なエピソードをありがとうございました。
では最後になりますが、みなさんの目指す樅の木福祉会聞かせてください。
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阪口
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利用者の方が安心安全に暮らせることはもちろん、樅の木福祉会で働いている職員、そして職員が抱える家族全員の生活と人生を背負っていくことになるので、関わる全ての人たちがもっともっと安心できる場所にしていきたいと思っています。
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柏木
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私も同じです。あとは事務方として、樅の木福祉会に入職した職員が“ここでずっと働き続けたい”と思えるような法人にしていくことが私たちの仕事ですので、利用者さんにとっても職員にとっても、さらに快適な環境を作っていきたいですね。
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村田
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私は一つの樅の木福祉会として、同じ理念のもとに、神戸本部と長野支部がお互いに、それぞれ“ここでしかできないこと”を発揮していけたらよいなと思います。